社内報のキソ

社内報のキソ

3-5.振り返りを仕組み化する

社内報の目的は「発行すること」ではありません。実際に社員に読まれ、求められている・届けるべき情報が正しく伝わり、社内に変化をもたらすということこそが重要です。「振り返り」は、ただの誤植チェックや見え方の問題を論じるだけではなく、その目的を達成できたかを確認すという視点で、必ず毎回、時間を確保して習慣化しましょう。。

 

良かった点を把握し、改善点を洗い出すことで、社内報そのものの改善だけではなく、担当者様ご自身のビジネス・パーソンとしての変化と成長のチャンスにもなります。

 

ここでは、社内報制作において重要な読者・制作関係者の声を集める方法や、モチベーションアップにつながる表彰制度についてご紹介します。

読者や編集者の声を反映する

振り返りの第一歩は、社内報関係者や読者の声を集めることです。読者が何を感じたのか、伝えたいメッセージは正確に届いたのか。また、社内報の制作業務が関係者の負担になっていないかという点についても確認し、次号の制作に生かしましょう。

 

1、アンケートで意見を集める

アンケートは多くの人の声を集めるための最適な手段です。冊子全体とコーナーごとに「良かった点」「改善点」を聞きましょう。回答を依頼する際は、担当者様が一通り書いてみた回答例として一緒に渡すことで、相手が答えやすくなります。

 

    • A関係者アンケート

社内報制作に協力していただいている編集委員などの関係者の声は貴重なものです。制作関係者向けアンケートには、内容とスケジュールの二つの観点を入れることをおすすめします。また、回答は選択肢によるものではなく、主体的な意見を書けるフリーワード型にし、多くの視点を持ち込めるようにしましょう。

 

関係者自身の意見だけではなく、その方の周りの意見や、拠点での反響、読まれ方といったリアルな声を集めてもらうようにお願いしておくと、同時に現場の意見を集めることもできます。

 

  • B読者アンケート

読者である社員の声も欠かせません。伝えたいメッセージが届いているか、社員がどんな情報を求めているかを知るため、定期的にアンケートを行う必要があります。イントラネットやメール、社内報への挟み込みといった配布方法があります。

 

読者アンケートでは回答に時間がかかりすぎないよう、質問項目を10個程度に絞る、選択肢を用意するなど、回答率を上げる工夫が必要です。項目は社員が求めている情報を知るための質問をベースに、社内報の閲読率や、発行目的の達成度を測れるものにしましょう。

 

図:社内広報アンケート 基本質問項目写真

 

回答しやすい工夫をしても、社員全員が対象のアンケートでは、なかなか協力してもらえない…という事情も多く耳にします。アンケートの回収率向上には、回答者に抽選でプレゼントを配布する、各部門長から回答を依頼してもらう、リマインドメールを送る、などの方法があります。また、社内報に集計結果を掲載すると、アンケートの認知と関心を高めることができます。

 

💡社内報コンサルタントからのワンポイントアドバイス
あらかじめ複数の社員を、「モニター」に任命し、発行後に必ずアンケートに答えていただく、という方法もあります。この場合、「周りの社員の反応はどうでしたか?」という質問も加えておくとよいでしょう。

 

2、振り返りミーティング

アンケートで集めた意見もふまえて、振り返りミーティングを行いましょう。発行後、時間がたつと改善点を忘れてしまったり、周囲からの意見が集まりにくくなったりすることが考えられるため、ミーティングはできるだけ早く実施することがおすすめです。この時、編集委員や制作会社にも参加してもらいましょう。

 

ミーティングで振り返る観点は2つ。内容やデザインなど社内報の中身と、スケジュールや制作管理など業務進行面での振り返りです。

 

    • A内容やデザインの振り返り

一冊全体と一つの企画について、良かった点や改善点をまとめます。発行目的や編集方針といった根本的な内容や、デザインの読みやすさや見栄えなどについても振り返ることがおすすめです。

 

  • Bスケジュール、業務進行面の振り返り

社内報の完成までにスケジュール通りに進まなかったことや、問題が発生したことがあればこの場で共有し、原因と改善策を考えます。社内報制作は、一つの号の発行後すぐに次の号の制作が始まります。次号の制作進行に改善策を講じて、PDCAを回しましょう。

 

関係者の声を拾い、振り返りミーティングで、次号に生かしていくことはとても重要です。アンケートの声から新企画をスタートさせたり、デザインの方向性を修正したりすることで、社員に寄り添った社内報にしていくことができます。周囲の声を反映し、よりよい社内報制作に繋げましょう。

社内報のコストを知る

複雑な工程でそれぞれの費用が発生する社内報制作では、そのプロセスの見直しがコスト削減に繋がることもあります。しかし、コスト削減を目的としてクオリティを犠牲にし、読者を失っては本末転倒です。プロセスの振り返りでは、自社と外部協力会社それぞれの役割を見直し、クオリティアップにつながるコスト削減を検討しましょう。

1、基本的なコスト

コスト削減策の前に、まずは社内報制作にかかる基本的な費用について確認しましょう。

コンサルティング費用:制作工程や体制の見直し、企画立案など組織課題の解決のために発生

…企画立案、年間計画の策定、制作体制の構築・人選、原稿依頼前の誌面構成編集会議、現状の社内報や制作業務へのフィードバック、アンケートによる効果分析など

制作費:ページ数を単価に価格設定し、紙面サイズ(A4・B5)や、色数・修正量によって変動

…デザイン費、オペレーション費、修正費、画像補正費、印刷データ作成費(出稿費)など。求めるクオリティや制作会社の実績・知名度によって価格は大きく異なる。

印刷費:「紙の厚さ・種類」「色数」「色校正」「部数」「製本」によって変動。

…ページ数も影響するが、色数が価格を大きく左右する。1色(モノクロ)、2色、4色(フルカラー)と色数が増えると価格は高くなる。

発送費:印刷所から手元に渡るまでにかかる費用

…本社に一括、各拠点・部署ごと、社員の自宅に発送といった送付方法によって変わる。発送単位を細かくするほど価格は高くなる。

オプション費用:上記4つの費用に加え、必要に応じて外部に依頼した際に発生するもの

 

  • 撮影費…撮影点数やカメラマンの拘束時間によって価格が設定される。
  • 取材費…取材準備の難易度・時間と、当日の拘束時間を合わせた稼動費として設定される。取材の専門性によっても変動。
  • イラスト費…オリジナルで作成したイラストなどを掲載する場合に発生。イラストのサイズや色数によって価格は変動。※制作会社が持つフリーの素材を使う場合は発生しない。
  • ライティング費…取材の情報や文献・資料から原稿を作成する時に発生。完成原稿の文字数やページ数で価格が設定される。取材費同様、専門性によって費用も高くなる。
  • リライト費…寄稿された原稿に修正を加える場合発生する費用。価格は原稿の文字数やページ数で設定。文章表現のチェックや、内容を変えず原稿の文字数をおさえる修正を行う場合がある。
  • 校正校閲費…掲載される文章や情報に誤りがないかという確認に発生する費用。価格はページ数に応じて設定されます。表現の統一や「てにをは」のチェックも行う。

 

近年は社内報制作専門会社にほぼ全ての業務を外部委託する会社も増えており、進行管理費や企画費といったコンサルティングにかかる項目・費用も多くなっています。今の見積もりを見直し、コストが発生している工程を確認するところから始めましょう。

 

 

2、基本コストの削減

自社の現状のコストを把握したら、自社業務も合わせて、依頼内容が実行されているか、相場に合っているかをひとつづつ確認していきます。少しでもあいまいな点や納得のいかない箇所があれば、外部の関係者にも質問しましょう。ここでは、基本コストの具体的な見直し方法について紹介します。

 

  • Aコンサルティング費用の見直し

依頼している外部の会社の業務分担が費用に見合っているかを考え、進行管理費や企画費についても相談しましょう。この時、依頼先以外の他社の情報を得ることも大切です。さまざまな制作会社や印刷会社のサービス項目や値段を調査比較して、依頼会社を変えることも視野にいれて検討しましょう。

 

  • B制作費の見直し

デザイン・レイアウトに関しては、多くの企業が印刷会社や制作会社に依頼しています。印刷会社と制作会社のそれぞれの特徴を知り、自社に合うのはどちらか検討してみましょう。

 

印刷会社は、印刷費と抱き合わせの高くない予算でデザイン制作をしてくれるというメリットがあります。しかしデザインを専門としているわけではないので、求めるデザインのクオリティが高い場合は希望通りにいかないことがあるかもしれません。

 

制作会社は、比較的高いデザインのクオリティを提供することができます。しかし制作会社が印刷工場を持っていない場合は印刷工程を外注することになるため、全体の費用が高額になってしまう場合があります。

 

コスト削減のため、デザインは制作会社に、印刷は印刷会社に分けて発注することもできます。それぞれの点を考慮し、自社の状況に応じて協力会社を選びましょう。

 

  • C印刷費の見直し

紙の種類や厚さ、発行部数を変えることで印刷費のコストダウンを図る企業がありますが、実はこれによる価格変動はあまりありません。印刷費用に直接影響するのは色数とページ数です。

 

色数はページごとに変えることもできます。例えば、表紙と裏表紙はフルカラーだけど中面は2色だけ、基本モノクロだけど表紙と中の見開き1ページだけフルカラー、というようなパターンを検討することが可能です。ただ、ページ数の変更には注意が必要です。社内報はほとんど中綴じ製本(ステープラー製本)されているので、製本の都合上、全ページ数は4の倍数でなければ冊子として完成しません。

 

 

3、外部依頼業務を見直す

オプション費用は、削減しやすい費用であると同時に、社内報のクオリティに関わる重要な箇所です。業務内容と自身のスキルを照合して、それぞれの業務を外部に依頼するか、自社で行うかを慎重に検討する必要があります。

 

撮影費は、一眼レフのデジタルカメラが普及し始め、担当者様が自分で撮影できる範囲が広がり削減可能になりました。しかし、照明技術が必要な撮影や、役員紹介など撮影機会が限られている企画は、プロのカメラマンに依頼した方が失敗のリスクを防ぐことができます。

 

また、取材やインタビューも、担当者様の編集者歴が浅い場合や座談会・社長インタビューといったスキルと知識を要する企画では、プロのライターに依頼するほうが良い場合があります。企画に応じた適切な判断をしましょう。

 

社内報制作にかかるコストを見直す場合、まず担当者様の今の業務内容を整理し、業務項目ごとにその対価を考える必要があります。社内報をどこまで自社で制作し、どこから外注するのかは、企業によって異なります。コスト削減のためにむやみに外注をやめることはおすすめしませんが、各項目でどこを重要視するのかが明確になっていれば、コストダウンとクオリティアップを両立して実現することは十分可能です。業務効率を上げたり、コストを削減したりするために、外注せずに内製した方がいい部分はどこかを考え、柔軟な姿勢で検討しましょう。

社外のコンテストに応募する

社内報には、全国規模の表彰制度があります。社外のコンテストに応募することは担当者様のモチベーションアップだけでなく、社内での社内報の注目度向上にも繋がります。ここでは、どのような表彰が行われているのか、重視される評価基準を紹介します。

 

1、経団連主催「経団連推薦社内報審査」

全国規模で開催されている表彰制度は二つ。経団連が主催している「経団連推薦社内報審査」は1966年から毎年実施されている歴史ある社内報表彰です。「雑誌・新聞型社内報部門」「WEB社内報部門」「映像社内報部門」の3部門が設けられており、それぞれの部門で優秀賞、総合賞、企画賞、奨励賞が選定されます。また、部門ごとの表彰とは別に審査委員特別賞も設けられています。

 

この審査では、発行目的や会社の経営環境を的確に反映している内容になっていることはもちろん、表紙の使い方や文章表現、レイアウトなどの細部までが評価の対象です。そのため全体に一貫したストーリー付けがされている社内報が評価されやすく、企画単体ではなく、社内報全体の評価を狙う企業が応募します。

 

 

2、ウィズワークス株式会社主催「社内報アワード」

社内報の制作をはじめとした事業を展開するウィズワークス主催の「社内報アワード」は2002年から年に1度開催されている社内報企画コンクールです。応募できる部門は大きく分けて4つ。「紙社内報部門」「Web社内報部門」「動画社内報部門」の3部門に加え、周年誌や記念誌といった、その他の従業員向け媒体を対象とした「特別部門」が設けられています。

 

「経団連推薦社内報審査」同様に企画内容やレイアウト、デザインなどが評価対象になりますが、大きな違いは、「企画ごとの応募ができる」という点です。2020年から紙社内報部門とweb/アプリ社内報部門に全体を評価する部門が新設されましたが、「特集・単発企画」や「連載・常設企画」、「表紙企画」といった企画単位での表彰制度が行われています。冊子全体の評価への応募には勇気が出ない方でも応募しやすく、社内の評判が良い企画を応募したいという方におすすめです。

3、評価されるポイント

「経団連推薦社内報審査」と「社内報アワード」のどちらにおいても、受賞の鍵となるのは「発行目的と企画・内容の整合性」です。グループ企業内の一体感醸成、経営方針の伝達、新しい理念の浸透、合併新社の相互理解など、社内報にはそれぞれの発行目的が定められています。その目的に適う企画をつくることが受賞への第一歩です。

 

「経団連推薦社内報審査」のHPで公表されている審査基準の一つに「発行目的・編集方針が会社の経営環境や社会環境を的確に反映し、社内報がそれを実現した内容になっている」というものがあります。「社内報アワード」においても、企画が発行目的・編集方針に合っているかは重要な審査基準の一つであり、高い評価に繋がるポイント。当たり前のように思う方も多いですが、この一貫性が欠落している社内報も意外と多くあります。今一度、自社の社内報を見直してみましょう。

 

ここから、「経団連推薦社内報審査」を例に、部門ごとの評価基準をいくつかご紹介します。

 

  • A雑誌・新聞型社内報部門

「雑誌・新聞型社内報部門」に応募する際は、「特集や単発企画のボリュームがあるもの」を選んで提出しましょう。こうした企画はその時々で一番重要な内容を掲載するため、社内ニュースや新入社員紹介といった、毎号・毎年掲載する企画と比べて、発行目的や会社の経営状況が色濃く表れます。そのため審査員も「発行目的と企画内容の整合性」を評価しやすく、高得点に繋がります。

 

  • BWEB社内報部門

「WEB社内報部門」で高い評価に繋がる審査基準は、「会社の世界観や個性が反映されているか」という点です。

 

この部門で受賞したあるメーカーは、毎日気軽に見ることができるというWebの性質を生かし、「毎日ブログ感覚で見られるウェブ社内報」というテーマを設定。会長社長ブログを設け、役員メッセージはリレー形式で掲載、日替わりの社員紹介ページなどが作られました。また、ページ自体もお菓子のパッケージのようなポップでカラフルなデザインで彩り、その企業の世界観が伝わるものにしました。

 

紙社内報との差別化を明確に表現し、デザインや企画に会社独自の世界観が反映されたWeb社内報制作を心掛けましょう。

 

  • C映像社内報部門

「映像社内報」については、まだ作ったことがないという方も多いのではないでしょうか。実際、映像社内報部門の応募数は他の部門よりも少ない状態です。映像に不慣れな状態から始める場合は、まず「企画賞」や「奨励賞」を狙うことをおすすめします。

 

受賞歴のある会社では、中期経営計画の全社的な浸透という目的を掲げ、社員にインタビューした「中期経営計画について経営陣に聞きたいこと」を、経営陣に答えてもらうというQ&A形式の動画を制作しました。

 

どの賞を狙ったとしても重視される基準は、目的と企画内容の整合性です。特に映像部門では、先にあげた二つの部門と比べて「全体」よりも「企画」にフォーカスした審査が行われるため、「動画の企画性」が重要になります。制作目的に合致した企画内容を正確に表現することが肝心です。

 

💡社内報コンサルタントからのワンポイントアドバイス発行目的に一致した社内報を作るのに加え、応募の際に必要な「応募用紙」の書き方も重要なポイントです。審査員は提出された社内報と応募用紙を見て審査するため、発行目的と企画内容の整合性は応募用紙の内容と照合して判断されます。書き方や内容が評価に直接影響するため、審査員に誤解なく適切に伝わる記入を心掛けましょう。

まとめ

「本当に意味のある社内報」にするために、読者へのアンケートなどでフィードバックを定期的に実施し、レベルアップを図りましょう。また、今回紹介したような社外のコンテストに応募することも、自社のレベルを知るために有効です。社内報制作に終わりはありません。振り返りを仕組み化し、より良い社内報を目指していきましょう!

 

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